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食品の国際規格 CODEXと蛍光X線分析

食品中有害元素検査装置としての蛍光X線装置

 はじめに

 工業製品や食品中に含まれる有害元素の管理・検査の基準はこのグローバルネットワークの現代では全世界である程度統一的に扱われるようになっているのと、同時に対象や基準も年々変わっています。例えばEUの工業製品の規制として有名であったRoHS/ELV指令も2013年1月3日より2015/65/EU改正RoHS指令、通称RoHS2に変わり、2019年7月以降は新たに4物質が規制対象となり、合計10物質が規制されることとなります。またCODEX委員会による食品の有害元素の最大基準値(ML:Maximum Level)についても、米のヒ素(As)の最大基準値(精米 0.2ppm, 玄米 0.35ppm)が2016年に設定されるなど、新たな最大基準値も設定されています。RoHS/ELV指令の際は前処理なしの非破壊分析スクリーニング検査が可能な装置として、弊社も製造しています蛍光X線分析装置が活躍しましたが、食品の検査はどうでしょうか?

 

CODEX規格

 CODEX規格とは、国際連合食糧農業機関(FAO)および世界保健機関(WHO)からなるコーデックス委員会でつくられた国際的な食品の規格のことです。以下にCODEXでの有害元素の最大基準値ML範囲と、代表的な食品および天然ミネラルウォーターでの最大基準値 MLの値を表にまとめました。

 

有害元素の最大基準値 (ML)

CODEX最大基準値  ML (水以外)  / ppm
 カドミウム (Cd) 2 ~ 0.05
鉛 (Pb) 1.5 ~ 0.01
水銀 (Hg) 0.1
メチル水銀 1 ~ 0.5
無機ヒ素 (As)  0.5 ~ 0.1
 スズ (Sn) 250 ~ 50 

 

代表的な食品および天然ミネラルウォーターの最大基準値 (ML)

食品のMLの例 / ppm 天然ミネラルウォーターのML  / ppm
精米 0.4 (Cd) Cd 0.003
果実類 0.1 (Pb) Pb 0.01
食品級の塩 0.1 (Hg) Hg 0.001
魚類 0.5 (メチル水銀) メチル水銀 MLなし
精米 0.2 (As) 無機As 0.01
缶詰食品(飲料除く) 250 (Sn) Sn MLなし

 

食品中放射性物質のガイドライン値(GL)

CODEXガイドライン  GL  / Bq/kg
食品中の放射性物質 10000 ~ 1
幼児食品以外の食品
Cs137, Cs134
1000
幼児食品
Cs137, Cs134
100

CODEX STAN193-1995規格の最大基準値ML(Maximum Level)(正確にはmg/kgで定義) 

 

 表を見てわかりますように、管理すべき有害元素の濃度が工業材料(100 ~ 1000ppm)と比較して、食品では2~4桁、天然ミネラルウォーターではさらに1桁以上小さくなるために検査が難しくなります。このように低い値に対する一般的な手法として、試料を強酸で溶かしてICP(誘導結合プラズム)で原子化し、高感度(ppb ~ pptオーダー)で分析できるICP発光分析やICP質量分析などが良く使われます。

 

食品分析と蛍光X線分析

 前項で低い値を測定する一般的な手法として、ICP発光分析やICP質量分析を使うと説明しましたが、なかなか「誰でも」「簡単に」には「正しい」測定は行えないのが実情です。ICP分析では試料調製の良し悪しが分析結果の正しさを大きく左右することが良く知られています。またICP分析では試料を溶解させるために少ないながらも酸性の溶液等がが生じて、この処理・廃棄が新たな手間となります。

 一方、蛍光X線分析は前処理が不要で、非破壊分析が可能な装置です。場合によっては粉末・プレス試料にする必要はありますが、溶解させる必要はありません。そのため、試料は食品そのものであり、廃棄は普通の食品と同じようにすることができます。(場合によっては胃袋の中への処理も可能です。)この点では食品中の有害金属の蛍光X線分析は他の分析と比べて非常にエコな分析法ともいえます。実際に弊社の蛍光X線装置と放射性セシウム検査装置で、どの程度の有害元素と放射性物質のスクリーニング検査ができるかについて見積もった結果を、上記の表にセルを色分けすることでまとめました。

 

蛍光X線装置および放射性セシウム検査装置で検査できる項目の色分け

  弊社装置で検査可能   元素測定で簡易検査可能
  極低濃度は検査困難   前処理(濃縮)により可能
  対象核種によっては可能   妨害元素濃度大は不可

 

 意外と多くの食品の検査が可能となることがお分かりになるかと存じます。食品中の有害元素のスクリーニング検査装置として、RoHS同様に弊社装置をご愛顧、もしくはご検討の際の候補にあげていただきますと幸いです。

 なお蛍光X線での食品中有害元素分析の難しさの原因は、この管理値が低いことに加えて、食品では散乱X線の影響が大きいこともあります。散乱X線についてはまた稿を改めてお話いたしたく存じます。

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